スキー場など管理されているエリア以外を滑走するスキー上級者でも、なかなか手を出しにくいバックカントリースキー。
人の手の入らないパウダースノーや、自然のままの地形を滑ることができるのが魅力です。
最近はアウトドア人気もあり、挑戦する人も増えているように感じます。
筆者もその一人です。
バックカントリースキーに興味があるけど、どうやって始めるのか疑問に思う人も多いですよね。
バックカントリースキーの始め方は
- ガイドツアーに参加する
- ガイド相応の知識のある経験者に同行する
基本的にはこの2択です。
本記事ではありがちな始め方のHOW TOではなく、スキー歴25年、バックカントリースキー歴4年の筆者(ぐりゆう)がバックカントリースキー初心者として
- 実際にどのようにバックカントリースキーを始めたのか
- 実際に始めてみてどうだったのか
を書いていきます。
お伝えしたいのは、誰にでもお勧めできるものではないけれど、自分にとってはとても魅力的であったということです。
筆者のバックカントリースキーの始め方
筆者は北海道生まれ、北海道育ちの20代。
スキーは2歳の時に初めて履き、小学生から大学までスキーの競技をしていました。
年間滑走日数のようなものは数えたことはありませんが、ほぼ週6日スキーを履いて15年以上過ごしてきました。
バックカントリースキーを始めたきっかけは、社会人になり付き合った彼に誘われたから。
- 道具一式をショップで揃える
- ガイド相応の知識のある人に同行する
という手順でバックカントリースキーデビューとなりました。
道具はスキー専門ショップで
- ファットスキー
- シール
- ツアービンディング
- ストック
- ブーツ
- バックパック
- アバランチビーコン
- ゾンデ・スコップ
と、もともと持っていたウェア類以外全てを新調しました。ざっと30万円近くかかった記憶があります。
そして彼氏に色々な知識を教え込まれ、初のバックカントリースキーデビューとなるのですが、なかなか壮絶でした。(次章に続く…)
始めようとしている人に伝えたいこと
私はツアーガイドではないので、このように記事を書いて良いのかすら悩むところではあったのですが、私なりに感じたことがあります。
はじめにも書いたように、バックカントリースキーは『誰にでもすすめられるもの』ではありません。
バックカントリースキーは、命の危険が伴います。
私は自分の命を預けられる信頼関係のある人以外とはバックカントリースキーには行きません。
初めてバックカントリーに行った時には、
- 危険箇所
- 危険な状況
- 地図の読み方
- 雪崩のメカニズム
- 雪崩が起きてしまった際の行動
などなど色々なことを実際に斜面をみて教えてもらいながら登りました。
正直にいうと、初めてまっさらな雪面にシュプールを描いた時の感動なんかよりも、自然の壮大さに対する恐怖や自分の知識がまだまだ足りないのだという不安が勝りました。
滑走レベルが高ければなんとかなるは間違い
私自身、スキー場での滑走に関してはどこに行ってもコントロールはできる自信があります。
ただし初めてバックカントリースキーに行った際に、滑走時だけでも、これは今まで自分がしてきたスキーとは別物だなと感じました。
- 斜面によって風の受け方が違い、雪質の変化が激しい
- 登った後の疲労で想像以上に足元のコントロールが難しい
- 立木が細かく滑走が難しい箇所もある
ただ一枚バーンのパウダーを滑るだけなら良いのですが、風の影響で雪が溜まっている場所があったり、ツリーホールになっている箇所もあります。
登り慣れていないうちは効率の良い歩き方がわからず、軽めの山から入ったにも関わらず足の疲労は相当なものでした。
加えて、初めて行った日は山頂付近が風が強かったあとだったこともあり、なかなかのアイスバーン。
うまくシールと雪面のタッチがわからず、ファットスキーのエッヂの立て方も難しく何度か登っている最中に滑落しました…。
普段スキー場では転倒の不安など考えることもありませんが、スキーをはいていて数十年ぶりに『あ、ヤバいかも』と身の危険を感じました。
帰りの車までたどり着き、一安心したことを覚えています。
遭難、雪崩リスク
近年、バックカントリースキー中の遭難事故や雪崩事故が多数発生しています。
- コンパス、地図、GPSが使える
- 同行者が雪崩に遭遇した場合のレスキュー訓練
- 時には中止や引き返す判断
ができないと、バックカントリースキーに行くべきではありません。
同行者に知識があっても、ホワイトアウトで見えない、転倒しはぐれてしまう場合などあります。
遭難を防ぐために全員がコンパスを持ち地図が読め、GPSが使えるようにしておく必要があります。
また、雪崩が起きてしまった際はビーコン、スコップ、ゾンデを使っていち早く要救助者を見つけ出し、助け出す訓練が必要です。
特にスキー場近くや、スキー場から管理区域外に出るような簡単に行くことができてしまうスポットでは、他のパーティについていけば問題ないと考えているようなスキーヤーや、中にはバックパックすら背負わずにコース外に出てしまう人も見かけます。
知識及び装備のない状態でバックカントリースキーに行くのは危険です、辞めましょう。
(スコップ、ビーコン、ゾンデはバックカントリー必須のアイテムです。)
ぶっちゃけ滑るだけなら、スキー場で良い
バックカントリースキーの魅力を語る上で『手付かずのパウダースノー』は外せないと思います。
しかし、『パウダースノー』だけを求めて行くのであれば、正直何十万も装備にお金をかけてバックカントリーに行くのではなく、スキー場で良いと思います。
天気図を見て雪の降り方や風向きを読めば、スキー場ならパウダースノーを登らずして楽しめますし。
それでもバックカントリースキーに行く理由
バックカントリースキーの危険を理解した上で、それでも山に向かうのはなぜか自分でも考えてみました。
自分たち以外誰もいない自然の贅沢
私は、住んでいるところが田舎なこともあり基本的に入る山は自分たち以外は誰もいない状況です。
『バックカントリーの聖地』と呼ばれるような場所や人気のスポットにはほとんど訪れたことがないので、他の人の感覚とは違うかもしれません。
バックカントリースキーで一番好きなのは『自分たち以外誰もいない自然を独り占めしている感覚』です。
風や水、木の軋む音。普段の生活ではなかなかしない、自然の小さな音に耳を澄ます感覚が好きです。
変化する風の温度や向きを感じ、季節を感じ、山で動物が生きている痕跡を見る。
バックカントリースキーに出会ったことで、日常生活も『なるべく自然に近いもの』『自然環境に負荷がかからないもの』に自然とシフトしていきました。
ハイクの達成感だけではない
バックカントリースキーのハイクの達成感は、夏登山の達成感とはまた違うと感じています。
なぜなら、一生懸命登った先に『滑るご褒美』があるから。
もちろん目指した場所にたどり着いた時は周りを見渡してホッと一息つきますが。
でも本番はその後です。
いかにして下るかを考えながらだと頑張って登れる、というのも好きなところの一つです。
ちなみに夏登山は下るのが大変なので、あまり好きではありません(汗)
自然の地形とパウダースノー
パウダースノーだけならゲレンデで良い!と思う私ですが、自然の地形の変化がバックカントリースキーの面白いところだと思います。
競技は15年以上続けて「これ以上スキー技術を向上させることはできない」と自分の中での限界を感じて辞めたのですが、初めてバックカントリースキーに山に入った時、
「スキー下手だな!自分まだ伸びしろあるじゃん…」
と感じました笑
自然の中では雪の変化、起伏など臨機応変に対応するスキー技術が求められ、その難しさも面白いと感じます。
始める際は必ずガイドツアーへ
記事のはじめにバックカントリースキーを始める方法は
- ガイドツアーに参加する
- ガイド同等の知識のある人に同行する
の2択だとお伝えしました。
自分は後者でしたが、やはりガイドツアーに入るのが理想だなと思います。
なぜなら知り合いならではの「このくらいは知っているだろう」というような認識に少し甘い部分があるからです。
あとから「こんな場合はどうしたら良いの?」と不安になってしまったこともありました。
それに経験があったとしても、教えてくれるその人にどのくらい正しい知識があるかの判断は未経験者には難しいですよね。
そんなわけで、初めての場合は山岳ガイドの資格を持ったガイドのツアーに入ることをおすすめします。
バックカントリースキーが全く初めての場合は、高価で揃えるのを躊躇してしまうビーコン、ゾンデ、スコップのレンタルができ、使い方から教えてもらえる「初心者コース」をおすすめします。
おすすめは例えば、関東甲信越からアクセスだと長野の乗鞍高原のこんなツアーとか
⇒【長野・乗鞍・バックカントリースキー】初心者大歓迎!バックカントリー入門コース
東北だと青森の八甲田のこんなツアーとかがおすすめです。
⇒【青森・バックカントリー】初心者OK!基礎から学べるバックカントリー初級プラン
アソビューの検索からだと、人気の行き先「スキー場」にすると関連するものがちょこちょこ見つかります。参考にしてみてくださいね。
もちろん、ご予約の際は事前の天気予報のチェックも忘れずに。。
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終わりに
以上、私のバックカントリースキーの始め方の実際とおすすめの始め方についてでした。
バックカントリースキー自体はとても魅力的なものですが、山岳事故があとをたたないのが現状です。
バックカントリースキーで人に迷惑をかけることがないように、しっかり知識を得た上で、楽しむ人が増えることを願っています。